聴くことで言いやすくなる、父と子の話

こんにちは!広報部ブログチームのDAIです。

今回は数年前に亡くなった父親の話です。
僕の父親は病気の進行により、最後の方は車椅子生活をしていました。
足だけでなく、手も動かしにくくなったため、ご飯を食べたりトイレに行く動作に苦労していました(こう書くと深刻な雰囲気になりますが、父は好きな映画をみたり、出来ないことは多いけど出来ることを楽しんでいる様子でした)。
主に介護していたのは僕の母親でしたが、僕を含めた子どもたちも交代で実家に顔を出して父の介護をしていました。
そんな状況の、ある出来事です。

僕は父のしたいことを最大限尊重しようと思い(子どもの権利を尊重する、チャイルドラインの活動に関わっていることだし)、頻繁に何をしたいか、きいて(尋ねて)いました。

たとえば「父さん、お茶にする?コーヒーにする?」みたいに。

すると父はだいたい「コーヒーでいい」と言っていました。
そこで、父はブラックコーヒーが好きだと理解して、その後しばらくブラックコーヒーを出し続けていました。
半年ほどたったある日のこと、その日は機嫌が悪かったためか、父が「どうしてお前はいつもブラックしか出さないのだ!!」と怒りだしました。
よく分からなかったので、詳しく話しをきいてみると、どうやら父はブラックコーヒーは好きではなかったのです。
そして、本当は、もっと甘いものが飲みたかったみたいです。
なぜ?もっと早く言わなかったのか尋ねてみると、「せっかく出してくれているから、なんとなく言いづらかった…」と(笑)

なんてことない、ありふれた話ではありますが、数年経って振り返ってみると、ふと次のように思いました。
僕が良かれと思って選んだお茶とブラックコーヒーは、どちらも父親にとっては欲しいものではなかったのだと。
つまり、どちらか選ばせて父の権利を尊重しているつもりになっていましたが、実は僕が勝手につくった選択肢を押し付けていただけだったのです。
もちろん「どっちが良い?」ときくことが、悪いと言いたい訳ではありません。
何も聞かずに、男はブラックだろうと決めつけるよりはマシです。
でも、本人のしたいことを尊重しているように見えて、実は尊重できていないこともある。

さらによく話しをしていくと、父親は怪我のせいで認知能力が低下して、自分のしてほしいことを言葉で伝えにくくなっていることがわかりました。

結局、自分のして欲しいことを言いづらい父親が言いやすいようにしておくために、普段から父と話をして父の話を聴いておく必要があったのだと、こうして数年後に気が付きました。

ところで、これって子どもにも言えるのかな~と思います。
子どもに「●●しなさい」と押し付けるだけではなく、子どもにもきいてみる。「どうしたいの?」と。
初めは何も言わないかもしれないけど、徐々に自分の意見を言っていいんだと感じてくれるかもしれません。
だからこそ、子どもが自分の意見を言いやすようにしておくためにも、子どもの話を普段から聴いておく必要があるのだと思いました。
以上、聴くことで言いやすくなるって話でした。

ちなみに冒頭の父親の話に戻ると、父の好きなものはブラックサンダーと甘いカフェオレでした(笑)

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